【2019年度第2回例会レポート】効率よいレビューを目指して
                (講師:TIS 中谷一樹さん、DTSインサイト 上田裕之さん)

今回は、SQiP研究会・ソフトウェアレビュー分科会の主査、副主査をされている中谷さん、上田さんから「レビューの効率化」というテーマでご講演・ご指導いただきました。

まず講演の最初に「レビューとは?」「効率とは?」という定義から説明されました。

■レビュー:プロジェクトの成果物を作成者以外の人が見て欠陥を検出することを主目的とした活動
■効 率 :使った労力に対する、得られた成果の割合(=成果/労力)

その上で、レビューを効率化するためには、「成果を高める」「労力を減らす」必要があるということでした。では実際に「レビューを効率化する」とはどういうことなのか。参加者事前アンケートの回答を見てみると、レビューの効率化の定義は17種類、レビュー効率化のための工夫については27種類挙げられていました。また、その後行ったグループ討議の結果、さらに20種類以上の定義が出されました。
このことから、一概にレビューの効率化とは何かを定義はできず、目的・用途、目指す目標、制約条件、今持っている知識・技術の度合い等によって効率化の具体的な方法は異なることを認識しました。

次にインスペクションプロセスの中の「集合会議」形式で“Web予約サイト”のケースをもとに4グループに分かれグループワーク形式でレビューを実施しました。その際、進行役、記述を解釈して読み上げる読み手、仕様の欠落や矛盾/懸念点を指摘する検証者、記録係、作成者※という役割を決め、レビューの計画(目的やレビュー観点など)を立て、その計画に基づきレビューを実施しました。

※SQiP研究会・ソフトウェアレビュー分科会では、一般に「レビューイ」と呼ばれる役割は「作成者」と呼ぶことにしているとのことです。レビューは「レビューする/レビューされる」という関係ではなく、「Respect & Influence(互いに尊敬しあい、影響を及ぼしあう)」であるべきだという考え方からこのように呼ぶことにしているそうです。

このレビューの後、振り返りを行い、各グループからレビュー結果の発表が行われました。グループごとのやり方の工夫/視点の違いから気づきを得ることができ、ここでも効果的なレビューについての様々な知見が得られました。

最後に、これまでSQiP研究会・ソフトウェアレビュー分科会で検討されたレビュー手法について8種類が紹介され、ここでも効果的なレビューのヒントを得ることができました。

今回は、「レビューの効率化」という漠としたテーマでしたが、講演、レビューとその結果共有と、様々なワークをとおして参加者がそれぞれに気づいた多くの「レビューの効率化」ポイントを共有することができました。また参加者は、自分の置かれた状況におけるレビュー目的も考え合わせ、今回のポイントを参考に次の日から具体的にレビューの効率化に取り組むと宣言することもでき、大変有意義な例会となりました。