【2019年度第3回例会レポート】
「対話の中で品質を考える:ユーザーリサーチに基づくデザインのアプローチ」
(講師:慶應義塾大学大学院 山崎真湖人さん)

今回は慶應義塾大学大学院、システムデザイン・マネジメント研究科の山崎先生をお招きし、「ユーザーリサーチに基づくデザインを有効に行うには」というテーマで講演とワークショップを行いました。

講演は以下の2つの言葉から始まりました。

・「何を作る」のまえに「何のために作る」
・「正しく作る」の前に「正しいものを作る」

これは、ユーザーが欲しているのは「モノ(何が欲しいか)」ではなく「コト(何のために、どんな体験をしたいか)」であり、「コト」をユーザーリサーチによって確かめながら作る、ということを意味しています。

ユーザーリサーチの目的は以下の通りです。

・機会を見つける(機会探索、コンセプト評価)
・要求を見極める(要求獲得、仕様評価)
・使いやすく・魅力的に作る(操作性評価)

機会探索、コンセプト評価、要求獲得、仕様評価、操作性評価を小さいサイクルで早く回していくことによって、ユーザーが欲している体験を見極めていきます。
このユーザーリサーチの代表的で活用範囲の広い方法がインタビューです。

インタビューは、気づきを得る、意見や感情を知る、活動を知る、など幅広く使える便利な方法ですが、ただの会話にならないようにすることが大事です。
そのために以下の流れで進めます。

1.計画:仮説を明確化(代替仮説も考える)
2.設計:質問に必要な視点を網羅、時間内に収まるよう話題を絞り込む
    (インタビューガイドを作ると良い)
3.準備:話題の自然な流れを考える
4.実施:説明しすぎずシンプルに質問する
5.分析:仮説に対する結果を示す
6.報告:関係者へ報告する

以上のことを踏まえ、「家族内の情報共有ツールを考える」というテーマでグループに分かれてワークを行いました。

実際にインタビューをしてみると、仮説がずれている、質問が自然な流れになっていない、など良い意味でユーザーが欲する「コト」とのずれやインタビューの難しさを実感できたと思います。
また、インタビューを上述の流れに沿って進めていくことによって、失敗を次のインタビューの改善につなげることが可能だとわかりました。

山崎先生は「インタビューは相手の話しを聞くだけでなく、相手にイメージしてもらうために聞き手側が発信することも重要」と仰っており、この言葉からも上述の流れの中でしっかりと準備することの大切さがうかがえました。

今回は対話という観点からアプローチしたテーマでしたが、「ユーザーが欲している「コト」に沿っていること」も品質であると学べた、有意義な例会になったと思います。