第3回例会は、ソフトウェアメトリクスの有識者である小池利和氏を講師にお招きし、「ソフトウェアメトリクスの運用・定着の取り組み」というテーマでご講演いただきました。

最初に、小池氏が品質マネジメント、プロセス改善において重視されていることをお話いただき、後半は、実際の帳票やデータを見せていただきながら、現場でメトリクスをどのように活用されていたか、どんな活動をされていたか、具体的なお話を聞かせていただきました。

品質への取り組みというところでは、一般論として教科書で見たことがある「品質マネジメント能力が成熟すればプロジェクトに占める総品質コストが低減する」ということを、自社のデータで証明された事例についてお聞きしました。
簡単に言えば、クレームコストを低減するためにレビューやテストに投資すれば一時的に品質コストが上昇するが、その結果テストバグやクレームが減るだけでなく欠陥の早期発見やテストの効率化などでレビューやテストのコストじたいも下がり、全体的に品質コストが下げられるということをデータに基づき実践された時のお話です。
自分が推し進めようとしていることが正しいことを自社データで証明できたため、自身の施策に自信がもてたというお話は、小池氏のメトリクスの有効性に関する信念を感じました。

次にメトリクス実践事例をお話しされましたが、現場で品質保証活動、メトリクス収集などが形骸化する一番の理由は、開発者にとってそれらの活動がプロジェクトの成功に寄与しないと受け取られているからだとおっしゃっています。そのようにならないためにも、我々スタッフの活動が常にプロジェクトの成功に貢献できているか自問自答しながら活動していく必要があるというご意見を伺いました。

小池氏の講演で特に私の心に残ったプロセス監査のポイントは以下の3つです。
・プロジェクトリーダーに品質保証部が見ていることによる安心感を与えること
・常にプロジェクトの成功を考えて発言・行動すること
・一方、プロジェクトに対しては友達ではなく客観的な姿勢で接すること

私自身も品質保証部の一員としてプロセス監査を行っていますが、この講演以降、自分の指摘がプロジェクトリーダーの安心感につながるような言葉を選んでコメントするように心がけています。

小池氏は今回、私たちの希望を取り入れてくださり、具体的な事例を多く見せていただき、新しく入会された方、お試し参加の方からも質問がある、活気のある例会になりました。