第6回の例会では、SQuBOK V1で執筆者、V2でエリアエディタ、V3で策定部会のリーダーをされている飯泉紀子氏(元QuaSTom会長、現相談役)を講師にお招きし、11月に発刊された「ソフトウェア品質 知識体系ガイド SQuBOK Guide V3」についてご講演いただきました。
その後、クラシックな手法で開発している参加者とV3で追加された新しい手法で開発している参加者に分かれて、「自分たちが抱える品質問題とSQuBOKの使い方」に関してディスカッションを行いました。
SQuBOK V1からV3すべてにかかわってこられた飯泉氏ならではの視点での品質の概念の変遷、V1、V2からV3で改定された肝について講演いただき、さらに、これからどのような品質が求められるようになるかの意見を聞かせていただくという他では聞くことができない贅沢な例会となりました。
【講演概要】
●SQuBOKの全体像とこれまでのSQuBOK
最初に、SQuBOKの全体像の説明をご講演いただきました。
SQuBOK は、日本発のソフトウェア品質知識体系であり、ソフトウェア品質という軸で技術を体系化したものです。なお、これまで発行されたV1、V2の内容は、次のようなものでした。
◇V1(2007 年発刊)
「ソフトウェア品質の基本概念」「ソフトウェア品質のマネジメント」「ソフトウェア品質
技術」の3章で構成
◇V2(2014 年発刊)
V1に「開発技術」、「専門的品質特性のソフトウェア品質技術」カテゴリを追加
●V3の概要
次にV3の改定の肝についてご講演いただきました。
・新設されたのは「専門的なソフトウェア品質の概念と技術」カテゴリ(ユーザビリティ、
セーフティ、セキュリティ、プライバシー)と「ソフトウェア品質の応用領域」カテゴリ(AI 、IoT 、クラウド、OSS,アジャイル)。
●イマドキの品質
また、イマドキの品質について次のような内容でご講演いただきました。
◇つながる時代の品質とは、見えない相手との接続に関しても品質を保証しなければなら
ないが、想定しないつながりが発生する
→完璧に把握するのは無理なのでリスクを想定するという考え方が、利用者にも
必要になる
◇機械学習システムの品質とは
機械学習システムはこれまでのソフトウェアと作り方が異なる
・これまでのソフトウェア(演繹的プログラミング)
仕様をモデル化し人が段階的に詳細化して実装
開発、テスト、運用の方法論は確立されている
プロセス品質の指標で評価する
・機械学習(帰納的プログラミング)
仕様を訓練データの形で表現し、機械学習によって実装する
開発、テスト、運用の方法論は、まだ確立されていない
客観的な精度をプロダクト品質の指標にできる
→「システムの機能」の達成度ではなく、「システムを使って達成したいこと」の達成度
で品質を考える必要がある
(例)購買を予測して、売れ残りそうなものをお勧めする
→購買が予測通りかではなく、不良在庫の低減という目標が達成できたかで
品質を考える
●これからの品質
最後に、これからの品質に関する展望について語っていただきました。
・従来の演繹的プログラミングは、今後もシステムソフトウェア開発の主流であろう。
・「品質を作りこむ」作法の大方の部分は、今後も活きるだろう。
・技術の進化と応用のスピードにキャッチアップする努力が必要だろう。
以上のように、V3で追加された分野であるIoT、クラウド、AIの品質についての説明もあり、SQuBOK V1、V2を持っているメンバーにとっても、V3を既に購入したメンバーにとっても大変有意義で刺激的な例会となりました。