今年度最初の例会は、アジャイルに関して多くの著書、訳書を出されているアトラクタFounder兼CTO/アジャイルコーチの吉羽龍太郎氏をお招きしご講演いただきました。

まず、うまくいっているチームとはどのようなものかを説明していただきました。Googleが2012年に開始した労働生産性向上計画プロジェクトであるアリストテレスの結果によると、均等な発言機会と共感力・他者理解力がある(心理的安全性がある)チームが成功するということでした。つまり、ハイパフォーマンスなチームのためには、皆が意見を言うことができ、改善や実験(と失敗)を繰り返せる安全性が重要であるとのことです。

次に、プロダクトの提供主体が企業である以上、最高のチームによって、たくさんの機能がありバグも少なくコードが綺麗なものを作っても、ニーズがないものであれば儲からず意味がないとおっしゃっていました。
一方、プロダクト開発等のスタートアップはニーズがない等の理由から失敗する確率が大きい割には、コストがかかります。従って、できるだけコストをかけずに素早くアイディアを検証する、”ニーズの芽があること”を確認してから作り込むことが大事になります。
そのためには、ソリューションを作ることに注力するよりは、まず初めに行う「解決したい課題を見つけ、課題とソリューションの仮説を評価することを繰り返す」こと、ソリューション開発後に「評価して作り直す、場合により課題とソリューションの仮説を評価することに戻る」ことに注力する必要があるとのことです。

以上を踏まえてアジャイルとは何かという話になりましたが、「アジャイルとは人間中心のフィードバックサイクル」 - つまり一度作ったら終わりではなく、不確実性に対処するために仮説検証を繰り返すための方法、価値あるものをなるべく早く見つけてそれを届けるための方法とのことであり、この理解が揃っていない状態で、アジャイルを「する」と失敗するとおっしゃっていました。
また、アジャイルで成果を決める要素は、「問題設定力」「開発力」「チーム力」の3つに対し、どこに着目すべきかの強弱をつけながら、全ての領域を考えていくことだとのことでした。

以上のような講演のあとの質疑応答では、アジャイルの品質保証はどこまでやるべきかについての見解、アジャイルを請負で対応するよう求めるお客様はアジャイルを理解していないのでアジャイルで対応すべきでない等、有益なコメントがいただけました。
今回は、アジャイルとは何かを説明していただくというよりは、アジャイル開発で成果を出すためのポイントをさまざまな観点から紹介いただきました。とにかく吉羽さんが企業としての成果に着目することを強調されていたのが印象的でした。